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黒澤の土曜日(11) 「用心棒」「椿三十郎」 [おきにいり♥]

月に一度、三鷹市芸術文化センターでの黒澤映画 上映会。
先14日は第11回。「用心棒」と「椿三十郎」の2本立てでした。

「用心棒」は1961年公開。

用心棒

用心棒

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2002/12/21
  • メディア: DVD
桑畑に囲まれた宿場町に、1人の浪人(三船敏郎)がたどり着く。
絹市もたつ豊かな町のはずなのに妙に寂れている。
人気のない通りを進んでいくと、向こうから野良犬がやってくる。人間の手首をくわえて…
やくざ勢力が賭場の縄張り争いをしており、村は荒れ果てていたのだ。
居酒屋の親父(東野英治郎)から事情を聞いた浪人は、両方の勢力に、
自分を用心棒として雇い入れるよううまく取り入り、やくざ者たちの一掃をたくらむ。
だが、片方の一家の切れ者の三男(仲代達矢)が帰郷して…


いかにも無頓着そうに頭をかきながら現れる浪人の後ろ姿から始まる、
犬が手首をくわえてくる衝撃のオープニングは、からっ風が吹き抜けていかにも西部劇ふう。
この作品がクリント・イーストウッドのマカロニ・ウエスタン「荒野の用心棒」にリメイクされたのも
有名な事実ですし、人を切った時の効果音とか、
切り結び、一瞬、互いに静止し合ったあとで、片方がバッタリ倒れる、という
今ではお約束の演出を、初めて取り入れた作品でもあり、
日本の時代劇を変えた1本でもあるのです!
とにかく痛快。口からでまかせに「桑畑三十郎」と名乗るその浪人のキャラクターが、
めっぽう腕が立ち、知略に富んで度胸も抜群。ぶっきらぼうな物言いをするくせに
実は熱い人情家、と、超ハードボイルド。  

描かれているのは、すさみきった町で、人間をやめちまったような極道どもが繰り広げる
非道極まりない所業、血なまぐさい切り合い。なのに、その合間合間には、
人間臭いからこそ笑える場面が散りばめられています。
その配分が絶妙なんですねー。そこんところもハードボイルドの世界です。

いい味出してる居酒屋の親父役の東野英治郎だけでなく、無宿者の役で西村晃も出ていて
後の黄門様そろい踏み、というのも、今観ればこその楽しみでした。


「椿三十郎」は1962年公開。
椿三十郎

椿三十郎

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2002/12/21
  • メディア: DVD

古びた寺の堂内で、城代家老の甥である伊織(加山雄三)を中心とした若い侍たちが
伊織の伯父である家老の汚職を糾弾しようと画策していた。
そこへ現れたのが、奥で寝ていた素浪人(三船敏郎)。どうやら百戦錬磨であるらしい浪人は、
青年たちが若さゆえの短慮で本当の悪党に踊らされているのだと看破、なりゆきでもあり、
「危なっかしくてしかたない」と、彼らに手を貸すこととなる。


「用心棒」で大評判となった三十郎(もうじき四十郎)というキャラクターを使った、続編的作品。
ただし、物語としては続編ではありません。最強の敵役がやはり仲代達矢であるだけで、
ほかの登場人物もまったく別です。
「用心棒」で戦った相手は無宿者などやくざな連中ですが、こんどはある藩の次席家老や大目付、と
バージョンアップ。切られる人間の数はすごいし、相手が侍だけに、知略謀略とも
はるかに前作をしのぎ、エンターテインメントに徹した作りになっています。
若い侍たち(加山雄三の若さ、美しさ、そして田中邦衛のやんちゃっぽさが楽しい!)の、
いくらなんでもそりゃないだろう、と思うほどの単純さ、マヌケさ。
敵方だったのに、捕虜のような扱いで押入れに押し込められているうちに、
妙に青年たちと気脈が合い始める侍(小林桂樹)や危機にあっても急がず慌てずの
家老の奥方(入江たか子)のとぼけた雰囲気も笑いを誘います。
そのぶんハードボイルドさは薄れますが、印象に残る名セリフは前作以上。

物語上、重要な役割を果たす椿の花、監督は赤い椿だけ、パートカラーで見せたかったそうですが
技術的に不可能。そのアイデアを実現させたのが、翌年の「天国と地獄」だったとか。
この「椿三十郎」では、赤い椿は、たぶん特別に色を塗って赤く見せているのでしょう。
本物の赤い椿をモノクロで撮っても、あんなに濃くはならないはず。こだわりです!


実はこの「椿三十郎」、今年リメイク公開されるんですって。
監督は森田芳光。三十郎は織田裕二。。。
公式ホームページの写真を見ると皆さんコザッパリしたお衣装で…
三船敏郎の衣装が、襟は擦り切れ垢で光ってるのとは大違いです。
衣装より何より、存在そのものから男くささ、人物の大きさが立ち上ってくる、
それがこの作品の要なのに、リメイクはどうなのかな~~~(ー'`ー;)ムムッ


「用心棒」でも「椿三十郎」でも、三十郎は広い背中をゆすりながら一言「あばよ」と言い残して
去っていきます。かっこいい!!


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コメント 10

Baldhead1010

この頃の映画はほんとに泥だらけになり、真剣そのものでしたね。
by Baldhead1010 (2007-04-17 07:25) 

春分

うーん、2本まとめて見る体力はもうないと思います。
by 春分 (2007-04-17 11:53) 

KEY

織田裕二の椿三十郎・・・観たくないなぁ(笑)。森田芳光監督って言うのもよくわかりません。「家族ゲーム」「間宮兄弟」は好きだったんですが。
それより何より、黒澤映画のリメイクに関わること自体、ものすごいチャレンジですね。
by KEY (2007-04-17 12:37) 

アートフル ドジャー

2作品とも、つい最近クライテリオンから高画質盤発売になったので購入しました。未だ見てませんが楽しみ・楽しみ。
by アートフル ドジャー (2007-04-17 16:17) 

懐かしいですね。黒澤映画を2本も・・・。むかしをいろいろと思い出しています。
そうですか。リメイクですか。森田作品となると想像がつきませんが、どこまで黒澤映画を脱却できるか・・・楽しみですね。
by (2007-04-17 16:28) 

田中邦衛といえば「北の国から」でのイメージが強くてやんちゃなのは見たくないです( ̄▽ ̄)「北の国から」でもやんちゃか?^^
by (2007-04-17 22:24) 

三船敏郎はやっぱりかっこいいです。
by (2007-04-18 10:46) 

袋田の住職

用心棒欲しいですね・・・
by 袋田の住職 (2007-04-18 15:05) 

ぱふ

●Bald さん
泥臭く、男臭くてすてきな映画でした★
●春分さん
いや、この2本立てなら、ぐいぐい引きこまれるので絶対大丈夫ですよ。
体力も湧いてくるというもの。
●KEYさん
ねーっ、そういうの蛮勇って言うんじゃないかしら。テレビで放映しても
たぶん、観たくない。
●アートフルドジャーさん
これはDVDで欲しいですね。何度も繰り返し観たいです。字幕があったら
もっといいです(例によって)。
●cocoa051さん
リメイクは難しいですよね。元が名作であればあるだけ難しい。
当時の三船敏郎と、今の織田裕二、年はそんなに変わらないんですが
イメージとしてまるで違いますよね。。。
●あっくん
田中邦衛、あまり変わってはいない感じですよ。ただ、あの独特の
喋り方は、まだ形成されていなかったかな。。
●まーさん
三船敏郎、かっこいいです! それでいて、ぼこぼこにされたあと、
東野英治郎に「お前、生きてるようにゃ見えねえぞ」と言われ
ニーッと笑った顔が最高に、かわいかった(?)。
●かのとさん
nice! ありがとうございました。
●住職さん
用心棒が必要な事態に、ならないのが一番ですけど
万一そういうハメになったら、三十郎さんみたいな人が
頼りになっていいだろうなあ。
●julieさん
nice! ありがとうございました!
by ぱふ (2007-04-21 04:06) 

流星☆彡

この2作品も 黒澤作品初心者に“お薦め”な作品と教えてもらっていて、
ぜひ観たいと思いつつ、先に こちらのレビューを覗きに伺いました。m(__)m
『天国と地獄』での…“煙突から一筋立ち昇るオレンジ色の煙”映像に、
CGを観慣れたはずの眼が衝撃を受けた…鑑賞感でしたが、その前年には
技術的に具現化が不可能だった演出なんですね。そんな状況下で、よくぞ
あんなに迫力溢れる作品を残されたものです。

「黒澤明の軌跡」上映前に リメイク版『椿三十郎』の予告編を観ましたが、
森田芳光監督って 私の大好きな宮部みゆき原作=『模倣犯』を とんでもない
演出作品にして がっかりさせてくれた前科(?)が あり。。。リメイク版よりも
やはり黒澤作品を先に観たほうが よさそうですね。^^;
by 流星☆彡 (2007-06-18 14:40) 

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