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黒澤の土曜日(13) 「どですかでん」「デルス・ウザーラ」 [おきにいり♥]

月に一度、三鷹市芸術文化センターでの黒澤映画 上映会。

6月16日は第13回。「どですかでん」「デルス・ウザーラ」の2本上映でした。
---って、1か月も前ですよね。どんだけ~っって話です。
2本とも、映画を観たら、どうしても原作を読みたくて、それを図書館で探し(最近は各図書館とも
インターネットで検索・予約できてホント便利)
借りに行って読み終えるのに、これだけ
時間がかかったのでございます~~。

「どですかでん」は1970年公開。黒澤明、初のカラー作品です。

どですかでん

どですかでん

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2003/01/21
  • メディア: DVD
 
どこかの場末。そこに母と住む六ちゃんは、他の人には見えない電車を
走らせる運転手をしていた。その街には、赤貧洗いざらしたような人々が住んでいる。
顔面神経症とびっこが難点の人のいい島さんと、恐ろしく愛想のないその奥さん、
子沢山のそれぞれが種違いだと評判の刷毛職人の家、ホームレスの親子、
そしてみんなが頼りにしている彫金職人のたんばさん… 彼らの驚きの生態が淡々と語られる。

日本にカラー映画が登場してから、実に19年後、黒澤監督がようやくカラーを導入した作品です。
アメリカとの合作「トラ・トラ・トラ!」で降板したりして、追い詰められていた時期らしいのですが
何となく、そんなココロの病み加減が感じられる場面もありました。。。
原作は山本周五郎の「季節のない街」。なんかしっくりしないなあ、と思いながら
観ていたのですが、原作を読んでみたら、驚くほど忠実に映像化されていたのでした。
人情と情緒の水彩風景みたいな周五郎世界を、色も質感も徹底的に作りこむ
原色油絵の黒澤タッチで描いたから違和感を覚えたのでしょう。
貧しく粗野なりに明るく生きている人々も描かれますが、そんな群像の中で一番醜悪なのが
実際には働きもせず子供や女たちに食わせてもらっているくせに、プライドだけ高くて臆病な男たち。
筋立ては原作と同じなのですが、これが映像で見るとその醜さが際立つんです!
ホームレスの父親と、ある飲んだくれ、2人のえせインテリの話は、いたたまれないほどでした。

そして、初のカラー作品ということもあったのかもしれませんが、黒澤映画には珍しい色気
この作品では感じました。
日雇い労務者2人組の男たちが、酔って家を間違えたのをきっかけに
女房を取り替えて(取り替えられて?)しまう、というエピソード、ここでは2軒の識別に
赤と黄色が使われているのですが、それが鮮烈! 人々は垢じみていてうすら黒いのに、
赤と黄の洗面器だけがツヤツヤしている---異常なんですが、一歩引いてみれば健康的な、
シレッとした官能を感じます。
逆に、飲んだくれの叔父にこき使われている若い姪が、内職の造花の中に倒れこむ場面、
これはもう、人でなしの叔父でなくてもゴックンものの、危なくていけない色気でした。
観終わって、不思議な感覚になる作品でしたね~

「デルス・ウザーラ」は1975年公開。100%ソ連出資のソ連映画です!
デルス・ウザーラ

デルス・ウザーラ

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2002/11/21
  • メディア: DVD
 
ロシアの探検家アルセーニエフは、極東地方の探検中、地元少数民族の猟師
デルス・ウザーラと出会う。知恵にあふれ、人にも自然にも温かい野生児デルスと
アルセーニエフの間にはすぐに友情がめばえ、彼らは何度かの探検を共にしていく。
 
実はこの作品、全然期待していませんでした。「お弁当も食べちゃって、居眠りしないかなー」なんて
思っていたほどです。ところがっ!!  ワタクシ的には、黒澤映画(今まで観た中で)
ベスト3か4の中に入る傑作だと判明したのです

この作品は完全にソ連映画。脚本もロシア人との共同執筆ですし、俳優は全員ロシア人、
ロケもすべてロシアです(2年にも及んだとか)。最初は北海道ロケとか、デルス役を三船敏郎で、
とか考えていたらしいですけど、そんなとこでお茶を濁さずに本物で撮ってくれてよかった!
この作品の主役はウスリー地方の大自然ですし、朝青龍の人を好くして年をとらせたような顔の
デルス・ウザーラ(演じたのはソ連の舞台俳優だということですが、写真に残された
本物のデルスにそっくり!)ですから!
そんな事情もあってか、いつも画面の構成も凝りに凝り、俳優の演技も作りこんだものを
要求する、監督の“黒澤臭さ”が影を潜めていて、それがまた良かったのではないでしょうか。
とはいえ、激流をいかだで下ろうとする場面などの躍動感は、いつもの黒澤カメラワーク。
ハラハラさせる演出は、お手の物という感じです。

映画に感動したものですから、頑張って原作も読んだのですが、これがまたいろんなことを
考えさせられました。ちょっとここでは書ききれないほど。また、機会を改めて書けたら、と
思っています。あ~、いつになるやら…
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アートフル ドジャー

どですかでん,・・・は高校生の頃初めて観て。理解出来ない所が若干ありましタッが歳を重ねるにつれ何となく良さが理解できる様に・・・。
サイドバーの大草原の~、子供の頃見てました。再放送も何度も見ました。本当名作!ですよね。
by アートフル ドジャー (2007-07-16 08:23) 

両方ともに観ていない作品です。
「どですかでん」は周五郎作品ということで、かすかな記憶がありますが、中身はぱふさんのレビューではじめて知ることになりました。黒澤作品の色気・・・直に感じてみたいですね。
by (2007-07-16 13:46) 

Baldhead1010

どですかでん・・・聞いたことはあります^^;
by Baldhead1010 (2007-07-17 07:45) 

響(きょう)

どですかでん、観たことがありますよ。(^^)
列車の走る音が「どですかでん」と聞こえる、というやつですよね。
人間性の深みのある表現が印象的でした。

今日は、トラックバック企画をつくりました。(^^)
by 響(きょう) (2007-07-19 13:49) 

KEY

「デルス・ウザーラ」の乾いた寒さって、本当に寒くて痛くてつらそうですよね。一種の記録映画みたいで、それでいて密室劇のような緊張感もあって、意外なほど傑作(失礼)ですね。雪、雨、陽射し、泥、水たまり、雲など自然現象を効果的に使った黒澤映画は、白黒こそ面白いと思っていた私にとってこれは予想外でした。
「暴走機関車」を観た時に、「予定通り黒澤映画になっていたらもっと面白かっただろうなぁ」と心底感じました。
by KEY (2007-07-19 20:08) 

デルスウザーラは読んでみたいと思っている本です。
by (2007-07-21 19:16) 

袋田の住職

話題作でしたよね。。。
by 袋田の住職 (2007-07-25 20:58) 

70年代の映画はさすがになかなか見る機会がないけど、上映会があるっていいですね!一度スクリーンで見てみたいです
by (2007-07-26 00:17) 

春分

ドリームガールズを買いたいと言って買ってないので後ろめたいです。
それはそうと、遠い昔にデルス=ウザーラは読みました。映画は観ていないですが、おかげで少しイメージできました。
by 春分 (2007-07-29 18:54) 

笙野みかげ

ああ、コメントしてたつもりでしていませんでした。バカな自分(^^ゞどんだけ~
 「ぱふ定食ひとつくださ~い!」
by 笙野みかげ (2007-07-30 14:30) 

ミナ

黒澤映画、一本も観たことがないのでとっても新鮮!!
三鷹市、凄いですねっ!!黒澤明作品、全て上映!!そして完売御礼になってた・・・!!
デルス・ウザーラ、初心者でも観れるかな・・・(*^_^*)
by ミナ (2007-07-31 22:15) 

ぱふ

皆さま、こんな放置状態のブログをご覧いただき、コメントまで…
ありがとうございましたっ!!
「デルスー・ウザーラ」は、映画は絶対お勧めです! 
ナチュラル志向の方には原作も。私にはバイブルの1つとなりそうです。
by ぱふ (2007-08-02 11:49) 

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