黒澤の土曜日(10)「蜘蛛巣城」「隠し砦の三悪人」 [おきにいり♥]
月に一度、三鷹市芸術文化センターでの黒澤映画 上映会。
先10日は第10回。「蜘蛛巣城」と「隠し砦の三悪人」の2本立てでした。
「蜘蛛巣城」は1957年公開。
戦乱の世。武将の鷲津武時(三船敏郎)は戦いの帰途、
迷い込んだ森で謎の老婆から奇妙な予言を聞く。
その後、予言どおり武時が出世していくと、欲にかられた妻(山田五十鈴)にそそのかされ
武時は主を殺し、城主の地位につくが…
「マクベス」を翻案した物語を、能の動きや様式美を散りばめて映像化した作品。
大がかりなセット(当時で美術費2500万円だったとか)、能面のようなメイク、
いかにもお能な摺り足で不気味なほどの迫力の山田五十鈴、
ラストシーンの矢ぶすま(本物の矢を使ったとか。無謀というか…
今なら保険会社が許さないかも)などなど、
外国で人気があるのもなるほど、と思える芸術作品でした。
が! あまりにアートだったせいか、途中眠くて。。気を失っていた瞬間が一度ならず
目に焼きついているのは、手を汚したという思いからか憑かれたように手を洗い続ける
有名なマクベス夫人シーンの山田五十鈴と、主殺しの罪におののく三船敏郎の表情。
相変わらず三船のセリフは怒鳴ってるだけ(?)で聞き取れませんが、
その表情は、たぶん万国共通の感情を表しています。立派なシェークスピア俳優です!
「隠し砦の三悪人」は1958年公開。
「蜘蛛巣城」で既に睡魔に襲われていたのに、お弁当まで食べてしまったあとの上映、
心配されましたが、こっちは超エンターテインメント作品。眠気など、微塵も感じませんでした。
戦乱の世。手柄をあげてひともうけ、と、戦場にやってきた
百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)。
だが、ついた軍は負けてしまい、逃げ惑ううちに2人は、滅ぼされた国の埋蔵金を発見!
と同時に、妙に押しの強い六郎太(三船敏郎)、さらに
不思議な美女、実は敗軍の世継ぎ雪姫(上原美佐)と出会い、旅を続けることになる。
太平と又七のデコボコ・コンビが「スター・ウォーズ」のロボット・コンビのモデルになった、
ということで知られていますが、このコンビとヒーローが3人で姫を守って帰還する、という
筋立てからして、ザックリ言えば同じなわけで。ただしデコボコ・コンビは、最後まで
自分たちが姫を守っているなんてこれっぽっちも考えてない。ひたすら自分の欲のために
動いているだけ。そういう人間くさい設定は、ロボットには真似できないおかし味で、最高です。
冒頭近く、いったんはぐれてしまい、捕虜にされていた太平と又七が出会い、命からがら
脱出する敵陣での反乱シーン、「人肉の階段」とか言ってしまいたくなるほどの迫力!
シネスコサイズのワイドスクリーンから、人間がはみ出していましたっ。
黒澤明は、ダイナミックさ、そして美的センスも、画面が広い方が格段に際立つようです。
そして、後半で敵を倒すため、三船敏郎が槍を構え、馬を駆って疾走する場面の
カッコいいこと! 本当にシビれます。映画の醍醐味でしょう。
これを書くためにいろいろ調べていて、時代的に「どうよ?」と思える太もも丸出しの姫を
演じた上原美佐が、実はまるっきりの素人だったと知りました。確かにセリフ回しは
ヘタクソでしたけど、それを言ったら三船敏郎だって、特にうまいわけじゃなし、
彼女のたたずまいは凛としていてインパクトがあったので、素人だったというのはビックリ。
これまた黒澤マジックだったのでしょうか。
私も三船敏郎=怒鳴りとギラギラした眼光という印象しかありません。
でも「生きものの記録」を見た時に、かなり印象が変わりました。
ちょっと風変わりな黒澤作品ですが、私の一押しは「生きものの記録」です。
by KEY (2007-03-18 19:59)
「隠し砦の三悪人」、よく覚えています。すごい!とマジ感動した映画でした。58年の公開ですか。あの時代に、よくぞこんな映画がつくられたものかと驚きますね。
by (2007-03-18 20:17)
三船敏郎・・・こんな俳優はもう出ないでしょうね。
by Baldhead1010 (2007-03-19 06:39)
ワイドですね!
私、ワイドスキンにしたら
画像がはみ出しそうに・・・
by 袋田の住職 (2007-03-21 09:03)
やっぱり大きな画面で観たいです。
by (2007-03-21 16:01)