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黒澤の土曜日(8)「生きる」 [おきにいり♥]

月に一度、三鷹市芸術文化センターでの黒澤映画 上映会。
先16日は第8回。「生きる」でした。

「生きる」は1952年公開。

生きる

生きる

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2003/03/21
  • メディア: DVD


役所に勤めて30余年、渡辺勘治(志村喬)は、市民課長と して
「何もしない」ことで日々を過ごしてきた。積み重ねられた書類に、
ただただハンコを押す毎日。
ところがその彼が、胃ガンに侵され余命も短いことに気づく。気も動転した彼は、
役所を欠勤したり、若さと活気の塊のような娘とよを誘い出しては遊び歩き始めた。
しかし、とよに「何か作ってみれば」と突き放され、役所でたらい回しにしていた
公園造成を思いつく…

黒澤明の傑作の1つです。20年ぶりに観ました。
私は、勘治の葬式の場面から始まると覚えていたんですが、
これが全然違って、冒頭から(自分に)びっくりしました。
話の進め方が、時間を追っていくのではなく、途中から過去を振り返るかたちになる
というのが強烈な印象なので、そんな覚え方をしていたのでしょうね。

医者からガン宣告を受けたわけではないのに、自分の死期を悟ってしまう、
そんな深刻な導入部を、笑いさえ誘いながら説明してしまう、これはさすが。
そして、その後の主人公のうろたえぶりも、身につまされはするけれど
どこかユーモラスで、監督は人間というものを大きな視点で見ているんだなあ、と
思わされました。

「もう時間がない」とわかったときに、何かを残したいと思って頑張る、、、
自分にそんな気力があるのか、ふと考えたら不安だったりします。
いつでも、そんな覚悟で生きていけばいいんだろうけど、勘治の同僚たちのように、
なかなかそんな気概が持てないのが現状。
だからこそ、みっともないまでに食い下がって公園造成を実現させた勘治の
最後の踏ん張りに感動するのだと思います。
ヤクザとおぼしき連中とすれ違う場面、いかにも三下のチンピラは
勘治にすごんでみせるのですが、迫力の親分(宮口精二)は勘治の目を見て、
その怖いものなしの境地に気づき、すっと身を引きます。宮口精二と志村喬の
目ヂカラの競演、ゾクゾクしました。

画面の構図も、すばらしく芸術的。
それでいて、ガチガチに凝った、頑張った、という感じではなく、自然な流れで
ピタッと決まった画面が現れる感じ。

いや~堪能いたしました


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コメント 8

黒澤作品はスゴイというか、見事ですね。この作品、なぜか一度も観る機会がなくて、ぱふさんの記事で筋書きを知りました。機会があったら観てみたいです。
by (2006-12-23 03:28) 

Baldhead1010

やはり、世界の黒澤さんですね。
by Baldhead1010 (2006-12-23 07:52) 

春分

これは観ております。印象的でした。ときどき、思い返します。
ブランコで歌う歌が聞こえてくるようです。
by 春分 (2006-12-23 17:25) 

袋田の住職

お葬式の場面って、菩提寺の宗派が気になって気になって・・・
お経でだいたいはわかりますが・・・
by 袋田の住職 (2006-12-23 20:48) 

この映画はいいですね。
ブランコに乗りながら歌うシーンが何とも言えません。
by (2006-12-23 20:55) 

アートフル ドジャー

昨日、偶然か?この作品を観ました。素晴らしき哉・・を観た後堪らなくこの作品を思い出して・・・。
by アートフル ドジャー (2006-12-23 22:44) 

ぱふ

●cocoa051さん
確かスピルバーグがリメイクするっていう話です。とすると主演は
トム・ハンクスかなあ、なんて勝手に妄想しています。
●Bald さん
ヒーローではなく、小市民の悲哀も、実は万国共通なんでしょうね。
●春分さん
命みじかし、恋せよ乙女… 心に残りますよね。
●住職さん
お葬式の場面、もうお膳が出ているところから始まっていて
お経は出てませんでした~
●まーさん
主人公が身近な存在なので、その悩みが他人事とは思えず、
胸に迫ってくるのだと思います。
●アートさん
きっとDVDでご覧になったんでしょうね。フィルムだと、音が
ひどくてセリフは全然聞き取れません。つらいですよ~
by ぱふ (2006-12-24 04:24) 

流星☆彡

テアトル新宿 「黒澤明の軌跡」で 観てきました。
時代変遷の大波(!?)を受けているにも係わらず、ぜんぜん古臭くなく
面白いことに 衝撃を受けて参りました。時代が変わっても普遍なテーマ性も
あるでしょうが、お役所体質の描写なんて、今や年金不信を決定的にして
いる社会保険庁の体質を鑑みても 極めて今日的にウケる社会風刺ですし。
私は初めて鑑賞しましたが、お葬式の場面に転換した演出技法には 感嘆
いたしました。安直なドラマなら、主人公が 自らの決心を思いついた後
“こんなに変わりました♪”描写を並べ立てて めでたし めでたし!…と
完結しても よさそうな展開ですが、うっかりすると 誰にも評価されないのでは
ないか!?との危惧を残しつつ、でも 人の強い想いの実りを匂わせただけの
終幕に、人間ドラマとしての奥深さを 魅せつけられました。

スピルバーグがリメイクするんですか。この日本人独特な感性=“そこ
はかとない主張”が、ハリウッド映画で どう描かれるのか。とても興味が
湧いてきます。
by 流星☆彡 (2007-06-18 15:04) 

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